​味覚育てる減塩

日本食はユネスコ無形文化遺産にも登録された、誇るべき食文化ですが、塩分が多くなりがちなのが難点です。

世界保健機構(WHO)が定めた塩分の目標基準が1日5g、厚労省が発表した「日本人の食事摂取基準2015年版策定検討会」の報告書での目標量は、男性1日8g未満、女性7g未満、「日本高血圧学会減塩委員会」による高血圧症予防のための目標摂取量は1日5g未満です。

では実際、日本人の1日あたりの塩分摂取量はどれくらいかというと(平成25年国民健康・栄養調査結果の概要より)、男性11.1g、女性9.4gにも及びます。

 

塩分の摂り過ぎによる弊害でまず大切なのが、高血圧症、それに伴う脳梗塞ですから、寝たきりを防ぐためにも非常に重要です。その他にも胃癌を始めとするガンや腎臓病など多くの影響があり、やはり是非取り組むべき食習慣の一つです。減塩食というと、不味い入院食を思い出すなど挫折のきっかけになりがちですが、継続をモットーとする「ユニバーサルな食指導」では、美味しく減塩できるコツをたくさん伝授しております。

 そのポイントの一つは、日本人の知恵である出汁や旨味を生かすことです。

私が診療を行う東京ミッドタウンクリニックでは、不味さでの挫折を防ぐために、私が主婦としてお勧めできる秀逸食材、絶品美味しい化学調味料不使用の野菜ブイヨンや、手軽で香りの高い出汁パックなどを置いています。アゴ出汁の風味や野菜の旨味を塩の代わりに使って頂くと、食材の旨味が生かされ、驚きの美味しさになります。

 

レストランでリピート率を上げるコツは、油と塩分をふんだんに使うことだそうです。強烈なインパクトを残してまた食べたいと思わせるのです。実際、塩分の強い食事は長く噛んでいられないので早食いになりやすく、次の一口に早く進むので摂取量が増えます。しょっぱさで米の量も増え、減量には大敵なのです。最初は物足りなく感じても、塩味に関する味覚は必ず慣れます。余分な塩分を減らし、食材の旨味を生かした料理を食べていると、味覚は鋭敏に育ちます。繊細な味の違いもわかる、本当の食材の美味しさを感じられる舌に、必ず変わり、それがまさに「味覚育てる減塩」の目指すところです。

 

最初から、全てを減塩にするのではなく、少しずつ減らしていきましょう。

醤油よりポン酢(お酢)、ポン酢よりカボスやレモン、といった具合です。スプレー醤油のようなツールを使うのも一つです。また、全部のおかずを減塩にせず、一品だけインパクトのあるおかずを残すのも、満足感の高い食事にするためのコツです。

 スパイスや薬味を上手に使うことでも減塩につながります。私の最近のお気に入りは絶妙なスパイスのブレンド、ケイジャンスパイスで、魚にも肉にも合い、独特の風味が普段の食材をちょっと珍しい一品に変身させ、娘にも好評です。クミンシードを合わせると更に風味が上がりますし、ターメリックやパプリカを混ぜることもあります。ターメリック、別名ウコンと言えば皆様にもおなじみでしょう。最強の抗酸化物質クルクミンが含まれ、動脈硬化進展予防にもガン予防にも良いのではないかと言われています。

ウコンとしてサプリメントで買うと高額ですが、調理のスパイスでしたら直接的に摂取できますし、お安いですよ。山椒も日本が誇る秀逸な香辛料です。最近は世界の星付きレストランでも用いられているようですね。ちなみに、山椒を食事の前に摂取すると味覚が鋭敏になりその後に食べる食材の美味しさを断然感じることができ、当然減塩につながります。鰻や佃煮だけでなく、デザートを含むあらゆる料理に合う秀逸食材です。

 

味覚を育てる減塩に、是非楽しんでチャレンジなさって下さい。